プリンス的10年代名盤のススメ
おれはプリンスが大好きである。
とは言ってもリアルタイムであの80年代は見ていない。なんなら90年代だって後追いだ。
リアルタイムで新譜として初めて出会ったが「3121」。14歳中2の時だ。さかのぼれば中1でスガシカオに出会って生意気にも心酔したおれは彼のインタビューやコラムなんかを読み漁るうちプリンスという仰々しい名のミュージシャンに興味を抱いていったのである。
当時地元の図書館のCDコーナーで気になるものをかたっぱしから借りまくっていたので、そこでなぜか(本当になぜか)ある日急に「Rainbow Children」が並んでいたのでこりゃいい機会と借りて聞いたのが原体験である。たぶん2004年か2005年あたりの夏。
そこからの付き合いなのでかれこれ15年くらいになるのだが、真のプリンスフリークの皆様には到底かなわないし、B面とかブート版とかそこまで深くも掘り下げていない。
でも、プリンスを好きになったのをきっかけにブラックミュージックに対する興味が急激なスピードで加速していったのは間違いないし、新しい音楽を探す際には「プリンスっぽい」というキーワードがあればとりあえず聞いてみようってな具合でプリンスを源流にして世界が広がっていったわけである。
プリンスフォロワーなんてマジで信じられないくらい膨大にいるし、フォロワーと言いつつもプリンスとは別の次元で素晴らしい音楽を作っている人もいれば、到底それレベルに達していないような人もいて、要は混合玉石。でもプリンスの替えになる人がいるかというとそれはマジで全く存在していないのね。そのくらいオリジナル。
今回は2010年以降でプリンスの影響を受けた(であろう)名盤を何枚か並べてみた。
感じ方も良し悪しも人それぞれだけど、興味がある人はぜひ聞いてみてほしい。
全部有名どころじゃんカスみたいに思う人はごめんね。
Jamie Lidell 『 Jamie Lidell 』(2013)
みんな大好きジェイミー・リデルの4枚目のフルアルバム。
テクノミュージシャンとしてキャリアをスタートさせたという異色の彼は、前作でもプリンスラバーっぷりを随所にのぞかせていたが、今作でその憧憬を爆発させた。
今作を作るにあたってプリンスのアルバムに使われているシンセサイザーを全部調べたといっているように、シンセの音使いから粘着質なボーカルまでかなり寄せている。
リードトラックの「Big Love」のイントロなんて完全にプリンス節が効いている。
ファンクとエレクトロを融合させた刺激的な名作。
Bilal 『 A Love Surreal 』(2013)
これももはや説明不要でしょう。ネオソウル随一の鬼才(変態)ビラルの3枚目。
もうジャケからビシビシと気持ちの悪い美意識が濃出しまくっている。
雨後の竹の子の如く出まくったネオソウルの後輩たちを軽くあしらいながら新たなステージに上ったことを感じさせてくれた。現代ジャズとも密接にリンクするビラルらしいジャジーなテイストも見事。
前作必聴だけど、今作はアートワークも含めて満点。
Starchild&The New Romantic 『 Language 』(2018)
この名前からすでに最高なワシントン出身のブラインドン・クックのソロプロジェクト。
名前から連想する通り、Pファンクにも影響を受けているよう。
今最もホットなアーティストであるブラッド・オレンジの盟友のようで、ブラッド・オレンジが好きな人にははまるし嫌いな人は同じく苦手だと思うくらい共通している部分が多い。
シンセ使いやボーカルワーク、ファンクをベースに様々なジャンルをミックスさせた音楽性はプリンスフォロワーらしさが全面に出ていてほほえましいけど、アーバンでメロウな感性は同じく影響を公言しているシャーデーに近い。
突出した個性はないが、完成度はすこぶる高い。
Starchild & The New Romantic - Hangin On
Language (+ボーナスディスク『Crucial』付き2枚組 / 解説・歌詞・対訳付き)[ARTPL-100]
- アーティスト:Starchild & The New Romantic
- 発売日: 2018/03/02
- メディア: CD
Janelle Monae 『 Dirty Computer 』(2018)
これも説明不要ですが。どうしても入れたくて入れた。
2013年リリースの「Erectric Lady」でプリンス本人も参加していたくらい親交のある彼女だけど、今作では「Make Me Feel」でプリンスの未発表音源を使用している。この曲はプリンスの往年の名曲を彷彿とさせるミニマルファンクの極致のような名曲で、初めて聴いたときはプリンスの後継者は彼女しかいないなんて興奮したものである。
アルバムとしての作りもパーフェクト。多彩かつスケールのでかさをこれでもかと見せつける。
今最高のミュージシャンのひとり。来日見逃したことは一生悔いる。また来てくれ。
Janelle Monáe – Make Me Feel (Official Audio)
なぜかオフィシャルMVが貼付けできなかったのでこちらで。
Louis Cole 『 Time 』(2018)
ブレインフィーダー所属のマルチプレイヤー、ルイス・コール。
ノウワーというディオユニットでの活動でも有名だけど、2018年にリリースされた本作は熱狂的に迎えれていたのも記憶に新しい。
ブレインフィーダーらしい(?)ごった煮ミクスチャーサウンドにメロウな歌心と酔狂なファルセットボイスを乗せるバランス感覚がプリンス譲りということで選出したけど、音楽性はそれほど似ていない。それこそ盟友のフライング・ロータスやサンダーキャットなどのジャズ+エレクトロ+ヒップホップ+ファンクな猥雑さが魅力的な天才。
意外なゲストでブラッドメルドーが参加。
Steve Lacy 『 Apollo XXI 』(2019)
昨年の音楽メディアの評価を総なめした傑作。ジ・インターネットのギタリストにして頭脳的ポジションのスティーブ・レイシーのファーストアルバム。
iPhoneでビート作りギターをオーバーダブするという今どきな宅録方法によって生み出された楽曲はたしかにチープでローファイ。必要最小限の音だけで作られているスカスカした音像とメロウで軽やかなギターサウンドが織りなす至高のファンクネスはプリンスを聞いているときの密室ファンクに通じるものがきっとあると思う。
「Playground」なんかはわかりやすいポップファンク。新時代のスター。
Steve Lacy - Playground (Official Video)
Apollo XXI [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC604)
- アーティスト:STEVE LACY,スティーヴ・レイシー
- 発売日: 2019/11/15
- メディア: CD
ながくなったけど、これでもほんの一部。
おそるべしプリンス、ってのが結論ね。
でも彼の遺伝子はこうして後世に間違いなく受け継がれているわけで、
そういった才能は見逃したくないな。