やるせなく果てしなく

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Nile Rodgers&Chic『It's About Me』の眩しさ

なんだこのキラキラした音は。

ナイル・ロジャースがシック名義でなんと26年ぶりにリリースした『It's About Me』である。

リリースは2018年。話題になってからもうそんな経ったのか(驚愕)。時の流れは早い。

It's About Time

It's About Time

 

 

前作にあたる『Chic-ism』も黄金期のシックを巧みに自己模倣して作られたダンサブルな快作だったけど、

まさかそこから26年も経てリリースされた本作でも見事にシック然としたサウンドを作り上げてしまうとは。

 

ナイル・ロジャースが今作を作った背景には間違いなく彼が参加したダフトパンクの2013年作『Randam Access Memories』のヒットがあるだろう。あそこで往年ファンだけでなく新しいファンを獲得し、まだまだ現役であることを実感したからこそ、かつてのモードを全開にしたのだと思う。

 

相方のバーナード・エドワードが不在で制作された今作は、若い才能をふんだんに起用しながら現代版ダンスポップを作り上げている。ただの懐古趣味に走るのではなく、間口を広げてアウトプットするナイル・ロジャースはさすがの慧眼である。もうすぐ70歳というのにその貪欲さに恐れ入るばかりである。

 

主な参加ミュージシャンはアンダーソン・パーク、ムラマサ、ヴィック・メンサ、ネイオ、クレイグ・デイヴィッドエルトン・ジョン、エミリー・サンデー、レディ・ガガなど。すさまじいラインナップ。

特にアンダーソン・パーク、ムラマサ、ネイオというランナップは個人的には悶絶もの。冒頭2曲ですでに腰砕けである。

 

まず、1977年のデビューアルバムを更新したアートワークも今作のあり方を示している。

"boogie All Night"、"Do You Wanna Party”、"Dance With Me”、"I Dance My Dance"などの曲名が並ぶ今作、徹頭徹尾ダンスに振り切っている。近年再ブームの流れにあるブギー、ディスコといった要素を本家ともいえるナイル・ロジャースが現代版にアップデートするとどうなるか、という回答であり、過去も現代も関係なしに踊れるという至極単純な結果がここには詰まっている。

 


Nile Rodgers, CHIC - Do You Wanna Party ft. LunchMoney Lewis

 

エルトン・ジョンとエミリー・サンデーが客演した"Queen”は今作唯一のスロージャムだけど、抑えたギターと二人の美しいボーカルの絡みあいが極上の空間を演出。ファルセット使いも含めてかつて彼と親交のあったプリンスへささげた歌のようにも聞こえる(歌詞は確認していないよ)。

 

1978年リリースのセカンドアルバム収録曲"I Want Your Love"はレディ・ガガを迎えて再録。

ガガの骨の太いボーカルが思いのほかマッチしていてグッド。他の曲との間に違和感もなく、非常にまとまりが良い。

 

MVは1978年のオリジナル録音。再録版はぜひ各々で聴いてみてほしい。


CHIC - I Want Your Love (Official Music Video)

 

 

小難しさや屁理屈は全部抜きにして、まずは踊ろうよ、そして結局踊っちゃえばハッピーなんだよというナイル・ロジャースのメッセージが聞こえてきそうな本作。

ナイル・ロジャースによるそれは説得力が半端じゃないし、みんな家に閉じこもっている今こそ、これを聴いて踊り明かすことに大きな意味があるんじゃないかと思う。