ZAZEN BOYS『すとーりーず』は日本語ロックの最高到達点
表題の通りである。
まあ白状すれば最近の日本のロックはあまり聞いていないのだけど、それもこれも向井秀徳がこんなアルバムを出すからである。これ聴いた後だと大抵のロックは聴く気が失せる。
現時点のZAZEN BOYSの最新作であり、吉田一郎がベースで在籍していた頃の最終作ということになる。
リリースは2012年。もう8年も前のことだ。
これまでの連番アルバムたちでナンバーガールの残滓を拭うように変化してきたZAZEN BOYSだが、前作にあたる『ZAZEN BOYS 4』でバンドの象徴ともいえるギターサウンドと対をなすようにシンセサイザーを大胆導入し、完全に新しいモードに突入したと思われたのが今作ではその方向性も生かしつつ、かつてのギターを復活させ、ZAZENの集大成ともいえるサウンドになっている。
全11曲、かつてないほどにメロディとハーモニーにも目線が届いているので、非常にポップでもある。
特に"破裂音の朝"などはナンバガ時代の曲の再録と言われても納得しそうなほどメロディアス。前作や前々作あたりだったらあり得ない感じ。
冒頭"サイボーグのおばけ"は神経質なギターとコズミックなシンセがリフを細かく刻み、地鳴りのようなベースラインとプログレッシブなドラミングがさく裂すつするオープニングにふさわしいナンバー。
いつもどおりの向井の口上が述べられるとともに、なだれ込むようにすさまじいグルーブが展開していく。
サイボーグのオバケが晩酌の相手となり、ヤマアラシに乗っかってパンツ一丁で踊れと命令するという曲なのだが完全に意味が分からない。この支離滅裂さがZAZEN BOYSである。
フランク・ザッパやキャプテン・ビーフハートの名前をドロップするところも実にらしい。
"ポテトサラダ"もポテトサラダを食いたいという思いを延々と語る奇怪な曲だが、ゴリっとしたサウンドと切れのある向井のボーカルがあるだけで何か含みのあるような歌詞に聞こえてくるから恐ろしい。
途中でカニが食いたいと煩悩が現れてくるところにいつも笑う。カニの方がいいよな。
ZAZEN BOYS - ポテトサラダ @ FREEDOMMUNE 0<ZERO> ONE THOUSAND 2013
個人的には"暗黒屋"という曲に痺れる。
どうしたらこういうリズムが生まれるのか疑問なグロいリズムとラップとリーディングの間を漂う向井の歌。
ブレイクの「オヤジ!」という素っ頓狂な裏声で腰が砕ける。最高である。
法被を着たツェッペリン
かつて何かの雑誌で向井秀徳はスタートさせたばかりのZAZEN BOYSをこう呼んでいた。
なるほどたしかにとうなったし、"The Crunge"に顕著なゼップのモダンで複雑なリズム解釈を日本的な浪曲や音頭という土着文化に落とし込むという挑戦から始まったと思わせるZAZEN BOYSだが、今となってはゼップは構成要素のほんの一部でしかなく、向井秀徳その人の音楽として完全に根付いている。
ハードロック、プログレッシブロック、テクノ、ファンクなどの膨大な音楽からのインプットがあるにも関わらずアウトプットは「向井秀徳だね」という一言に集約されるという驚異的なマンネリズム。偉大である。
吉田一郎が脱退後、MIYAという女性ベーシストが加入したのだが、新体制になってもまたすごい。
恥ずかしながら彼女が在籍しているバンドのことは知らなかったのだが、向井秀徳はプレイヤーの選球眼が相変わらず優れている。プロデューサーとしても才気を見せる向井ならではのフックアップだと思う。
4作目と2作目の収録曲のライブだが、とんでもないことになっている。
まだ生で観たことないのが悔やまれる。
Zazen Boys - Honnoji / Cold Beat 7.19 2018
あまりにも奇天烈で個性的なのでフォロワーが出ようもないというのがZAZEN BOYSのすごみである。
彼らの拓いていった道を進むのは諦めて別の道に行くのが賢明なのは間違いない。
すっかりロックを聴くことが減ってきたのだが、
たまにこういう刺激的な音楽を聴くと奮い立つな。
繰り返される諸行無常!
よみがえる性的衝動!!